空き家流通、業者報酬や情報入手など課題に

社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(部会長:中田裕康・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は4日、31回目となる会合を開き、前回に引き続き「空き家対策」のあり方について議論した。

 今回は、横浜市の空き家対策と、業界団体の取り組みとして(公社)全国宅地建物取引業協会連合会と(公社)全日本不動産協会の空き家対策についてヒアリングを行なった。

 2013年に空き家率が10.09%と2ケタに達した横浜市は、16年2月に「横浜市空家等対策計画」を策定。市内で約60万戸の一戸建て住宅に対する空き家予防措置と、「その他空き家」約2万戸の流通・活用促進、腐朽・破損した「その他空き家」の管理不全解消などを総合的に推進。空き家の譲渡所得特別控除の実績では、政令市では突出した件数となる250件超を挙げていることや、改修や入居者への家賃補助で子育て賃貸住宅としての流通促進を図る制度や、産官学連携によるシェアハウスとしての利活用といった空き家対策に着手していると説明した。

 全宅連は、全国47都道府県宅建協会が、各自治体と「空き家バンク」の運営で連携。すでに、41協会が361の都道府県・市町村と連携し、空き家の流通や有効活用を支援している。しかし、空き家所有者情報の入手が困難なこと、成約に至るケースが少なく、労力の割に報酬が少ないことなどから、総じて低額物件が多い空き家の媒介を敬遠する傾向が強いとした。また、山梨県の会員会社が仲介した、取引価格198万円空き家のケースで試算したところ、手数料収入19万8,000円に対し、業者の労務コストと諸経費合わせ約23万円と赤字となっている例を挙げ、「仲介手数料とは別に調査費用だけでもいただけるようになるとありがたい」(同協会政策推進委員長・小林勇氏)とした。

  全日も、全国23の都道府県本部が空き家等の流通活性化対策で官民連携。また、空き家流通活性化の一環として住宅インスペクション事業者と連携し、空き家にインスペクションした後、瑕疵保険を付保して商品化する取り組みも行なっており、今年度からはインスペクションに対する助成も実施する予定。一方で、空き家を商品化するうえで違反建築の是正や除却の費用をだれが負担するか、所有者情報を宅建業者に開示するルール作り、所有者の空き家活動の意識が低いことなどを課題として挙げた。

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