社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(部会長:中田裕康・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は10日、30回目となる会合を開き、国土行政の重要課題となっている「空き家対策」のあり方について、不動産流通業の立場から議論した。
空き家対策については、空き家対策特別措置法による特定空き家の除却の推進に加え、2017年度以降は全国版空き家・空地バンクの構築、小口資金を活用した不動産特定共同事業制度の創設、住宅セーフティネットとしての活用などの取り組みも始まる予定。部会では、これらのあり方や他の施策の可能性について議論していく予定。
今回は、地方自治体の取り組み事例として、上田市長の母袋創一氏が同市の空き家対策について、NPO法人空家・空地管理センター事務局長の上田福三氏は同センターの事業について説明した。
母袋氏は、中心市街地の空き店舗を女性向けコワーキングスペースとして再生した「hanalab.UNNO」や同じく空き店舗に設けた産学交流拠点「まちなかキャンパスうえだ」等の成功事例を紹介。空き家バンクも登録数69件に対し利用希望者が140件、成約数31件の実績を上げたと報告した。一方で、市内の空き家6,900件に対して空き家バンク登録数が伸び悩んでいること、空き家のほとんどが売価100万円以下のもので、仲介事業者の報酬額が少ないのにもかかわらず修繕箇所等の説明など実務量が多いこと、現行の農地転用制度では、空き家と農地を同時に処分できないことなどを課題としてあげ、「空き家対策は、そのまま都市間格差につながってくる。官民が空き家に関する情報や課題を一元化して管理していくべき」と訴えた。
上田氏は、全国351市区町村での空き家の活用相談を通じ、「空き家活用の促進には、活用のきっかけと利用しやすい商品・サービスが不可欠」との判断から、事業者が空き家を固定資産税と同額で借り上げ、事業者の投資により賃貸戸建とする「AKARI」や、事業者負担で空き家を解体しコインパーキングとする「AKARI CP」、空き家に自動販売機を置き、その売り上げで同センターが空き家・空地管理サービスを行なうといったサービスメニューを紹介した。「地方を中心に、所有者の思ったような価格で活用できない空き家は多いが、踏ん切りさえつけば活用できない不動産はむしろ少ない」と指摘し、仲介業者の空き家仲介のモチベーションを高めるため、法定手数料の見直しを訴えた。
また同省からは、空き家対策特別措置法の運用状況が発表された。同法に基づき、全国107市町村が空家等対策計画を策定済み。特定空家等に対し、勧告137件、命令7件、代執行22件が行なわれたとした。
同部会では、4月に予定している次回会合でも、空き家対策について議論する方針。